安倍元首相銃撃事件をプロとして分析

皆さんごきげんよう♪

あの安倍元首相が銃撃されるというショッキングなニュースから1週間が経ちました。

私は元警察官であり、要人の警護を担当していました。

転職した現在は、民間の警備会社で、企業のトップや芸能人、政治家などの警護を担当しています。

また、若手警備員を次代の警護員として育成すべく、指導にも当たっています。

いわゆる警護のプロなわけですが、本事件を知った瞬間から、各種ニュース映像やインターネット上にアップされた動画を分析しました。

事件直後の率直な感想としては、とても憤りました。

国内外に警察の無能さを晒してしまったからです。

同じ警護を担当する者として、自分自身も無能と見られることに恐れもあり、自分自身が無能と言われているようで、悔しくもありました。

俺ならそうはならなかった!と言っても、それは「たられば」でしかなく、誰にでも言えることです。

そういうこともあり、すぐには記事を書かずに1週間頭を冷やしながら冷静に分析しました。

分析した結果は、自分用のメモとしてまとめましたが、要点だけをざっくりと書いただけで結構なボリュームになってしまいました。

これは会社から指示されたわけではなく、今後の指導に生かすべく自分の備忘録的に作成したものなので、どこにも出しません。

警察庁の分析チームが現地入りしているので、細かな検証がなされるもの思われます。どこまでその結果が公表されるか分かりませんが。

たぶん私のと似たようなものになると思われます・・・。

もしそれが、現場の警察官に責任を押し付けるものであった場合、再び同じことが起きます。

彼等は、独断で動いていたのではなく、組織的に動いていたのであり、その責任は組織にあります。現場の警察官を責めても何も解決しないんです。

さて、今回の事件の分析を結論から申しますと、ここでは事件の直接的要因等の詳細は書きません。

なぜならば、それは警護の手法に深くかかわる内容だからです。

それに、私個人の意見が専門家の分析結果として独り歩きすることも避けなければなりません。

それなら、何でこんな記事書いてんだよ( ゚Д゚)

と突っ込まれそうですが、どうしても言いたいことがあって記事にしました。

こういう意見は少ないと思うので、そういう見方もあるということをご理解をいただけると嬉しいです。

警察だけが原因?

奈良県警察の警護担当にも知人がいるので、悪く言いたくありませんが、事実は事実として正直に語りたいと思います。

まず言いたいのは、間違いなく警察の失態です。

警備の世界は、成功と失敗しかなく、何もなければ成功、何かあれば失敗です。

今回は銃撃を許している時点で失敗であり、警護対象者が亡くなったことは世紀の大失敗と言えます。

実際に被疑者は前日の岡山県での演説に行ったらしいですが、銃を持って近づけなかったので断念したと供述しているそうです。

それが事実ならば、岡山県警は警備に成功した訳です。

誰が何と言おうと、警察の失態です。

では、警察だけが問題かというと、そうでもありません。

誤解のないように言っておくと、誰が悪いとか悪くないの話ではありません。

人が人を守る以上、守られる側にも、ファンや国民にも一定の我慢が必要になります。

守られる側とすれば、外にいる間ずっと付き纏われたら鬱陶しいことでしょう。

芸能人であれば、ファンとの触れ合いの時に警護がそばにいたら、邪魔でしかないでしょう。

政治家であれば、握手の数だけ票が増えると言われる選挙戦で、ガッチガチに警護に守られているイメージは避けたいところでしょう。

必然的に、「もう少し離れてほしい」「この先は付いて来ないでほしい」等の要望が出る訳です。

でも、その距離感では、刃物ならもとかく銃器を使われては守れないんです。

物理的に無理なんです。

そこのところも、国民の皆さんには理解いただければと思います。

そこで警察が「場所をここに変えてほしい」「人数を増やしたい」「もう少し近くに寄らせてほしい」などを警護対象者側に申し入れるのですが、根拠のない安全神話に支配され警備が軽んじられる日本において、どちらの意見が通るのかは想像に易いですよね。

「銃撃なんて起きやしない」「どうせ何もないのに」そう言って警備を軽んじてきたのは、他でもない守られる側と国民ではないでしょうか。

だとするならば、警察だけの問題ではないということになりますが、果たしてそこまで警察庁ははっきりと言えるかどうか・・・。

警察はまだ良い方です。民間の場合は、警護対象と警備会社が直接の契約関係にあるため、それが顕著です。

グダグダ言うなら、警備会社を変えますね~で終わりです。

今回の事件で、今後は警備というものも重視され、警備側の意見が尊重されるきっかけになるのではないかと見ています。

警護は命を投げ出すべき?

あと言いたいのが、「命を投げ出して守れ」という意見が多いことです。

確かに、私も最終的に他に手段がなければ命を投げ出してでも守ろうとするかもしれません。

でも、それは他人が軽々しく言うことではないと思うのです。

警護員が命を投げ出せば、その場は救えたとしても、第2波の攻撃などから警護対象者を守れませし、傷ついた対象を救護することもできません。

例え警護対象者が傷ついたとしても、対象の命を最後まで守るためにはどうすべきか、警護員は瞬時に判断しながら命をかけて現場に立っています。

我々は死ぬためにいるのではありません。対象者を守るためにいるのです。

それを、現実を知らない素人が、簡単に我々の命を語らないで頂きたい。

これが本音です。

警察はまだ良いですよ。死ねば英雄になれるし、その後の補償も手厚いです。

民間なんて・・・((+_+))

当事者を責めないでください

現場で実際に警護に当たっていた人達を、どうか責めないであげてください。

確かに至らない点は多々あったと思います。

でも、彼等はあのとき、真剣に命を懸ける覚悟で臨んでいたはずです。

動けなかったのは、その覚悟がなかったからではなく、訓練不足であったり、経験不足が原因でしょう。

でも、それも彼等の責任ではありません。

全員が一流の組織なんてありません。これは組織の問題であり、指揮の問題です。

彼等を一番責めているのは、間違いなく彼ら自身です。

これ以上、彼等を責めないであげてください。

責めても安倍元首相は帰ってこないし、事態は良い方向には向きません。

彼等の精神状態が心配されます。正直、自傷行為を警戒しなければならないレベルだと思っています。

よろしくお願いいたします。

コメント

PAGE TOP